「日野原さん、あの……」 なにがなんだかわからずに私は目線をあげる。 「さっきはありがとう。もう平気だから」 口許に浮かんだ笑み。 すっかり私の知る日野原さんの顔に戻っていた。 「わたしからも伝えていい?工藤くんのことなんだけど」 「工藤くんの……?」 こくりと頷いた日野原さんの瞳が曇り出していく。 「特進科の人ってほぼもう志望校が決まってる人が多いの。でも、工藤くんだけが、二度目の進路調査票を白紙で提出してて……」 「えっ?」 白紙……?