「鼻も真っ赤じゃん、バカ」
「工藤くん痛いれす~……」
「だから待たなくていいって言ったんだよ。風邪ひいたら心配すんだろ……」
ぷいっ、と工藤くんが顔を背ける。
「風邪ひくなよ……」
そう言って私のマフラーを口許まで引っ張りあげると、特進科の方へと向かっていった。
え……今なんて…………?
「し、心配って………」
私を……?
聞き間違いでも勘違いでもない。
今確かにそう言った。
心配すんだろ……心配すんだろ……心配すんだろ。(残響)
私の耳が幸せになる。
私の心はまた工藤くんでいっぱいになる。
今日も私の一日は、工藤くんから始まる。
本当に、工藤くんは私を喜ばせる天才なんじゃないかって思う。



