「立てる?」
冬の冷たい空気に通る声。
「俺、塾の帰りなんだよね」
「……」
「めんどくせーって思ってたけど、よかった。今日塾に行ってて」
「よかった……?」
「そ。塾行ってなかったら、ここ通んないから」
ほら、と。
行き交う人々の好奇の目に晒されていても、臆することなく私に手を差し伸べる彼。
ちぎれそうな程冷たくなった自分の手を、彼の手に重ねれば、その温かさに涙が零れ落ちた。
「コレは削除しておくから安心して?」
まだ力の入らない足で立つ私に動画を削除した画面を見せる。
惨めで情けない……。
「こんなもの見たって、誰も幸せになんかならないっての。悪趣味にも程があるな」
彼の隣で、どうして……と、私は思う。
どうして……。



