「一重積んでは父のためぇ」


日の光が辺りを明るく包む頃、今日も調子はずれな歌声が賽の河原に響く。

せっせと石を積む子ども達を眺めながら、歌の主である大鬼はあくびをかいた。


「二重積んでは母の為、と」


視界の隅に、今にも積み上がりそうな石の塔を見つけた大鬼は、その塔を作っている子どもへと近付いていく。


「いい調子だな坊主」


「……」


子どもはうつむいたままぴたりと動きを止めた。


「でもこんな醜い塔じゃあ、両親の供養にはならんな、と」


言うなり、大鬼は塔を払いのけた。

完成目前だった石の塔は、再び河原の石へと成り下がる。

しかし子どもは特に落胆の色も見せない。

何度となく繰り返されてきた行いに、感覚が麻痺しているのかも知れない。

何の為に石を積んでいるのか、それすらも忘れているかもしれなかった。