朝目覚めると、体が痛かった。


ソファーで寝ちゃったんだ…体をグッと伸ばす。


制服に着替えて、リビングに行くと
陽介がいた。


「椿、おはよ!」パンをかじりながら微笑む。


「おはよ」私も笑顔で答える。


颯介の姿が見えない事にホッと胸をなで下ろす。


今、顔を見合わせると顔が真っ赤になる事に違いない。


自分でも昨日あんな大胆な行動に出た事を驚いている。


「椿!来月、夏祭りあるから浴衣着て行こ!」と1枚のチラシを見せてくれる。


「夏祭り?」受け取ったチラシを見ると、7月23日に市内で大きな夏祭りがあるみたいだった。


「夏祭りか…行った事ないかも」
そう言う私に


「だったら絶対行こ!約束したろ?これから楽しい思い出作ろうって」とニコニコ笑う。


初めて会った時に陽介は言ってくれた。
楽しい思い出をたくさん作ろうって。


「ありがとう。楽しみにしている!」心から楽しみだと思った。


私も朝食を食べようとした時に、リビングのドアが開き天宮さんが入って来た。


天宮さんと目が合いドキっとした。


颯介の昨日の言葉が耳に残っている。


“セックスしたよ”


昨日はそれどころじゃなくて、その事をすっかり忘れていた。


天宮さんは
「椿さん、おはようございます」何事もなかった様にいつもの様に微笑む。


「…お…はようございます」ここで挨拶しなかったら変に思われると思い声を絞り出した。


そんな私の横を通り過ぎ、カバンから一冊の参考書を出して陽介に渡した。


「陽介さん、おはようございます。頼まれていた参考書です」


「わー!ありがとう!英文が分からなくて、この参考書なら分かりやすいってネットに載っていたから」の参考書をパラパラめくる。


私は何だかその場にいるのが、苦しくなり


「マリ子さん!今日、早く行く予定だったの忘れてた!ご飯パスして行くね」とその場から逃げ出した。