愛は惜しみなく与う②


「ゆっくり、ゆっくりでいい」

背中をさする泉。杏は涙を流しながら苦しそうに息をする

俺は二人から少し離れる

こういう時でも泉は冷静で、そして頼りになる


「大丈夫だから。杏のせいじゃないから」


杏の顔を覗き込み泉はいう。それに答えるように杏は頭を縦に振る

俺は見ていることしかできなかった


隣で慧が俺にいう


「俺も同じこと今思ってる」


そう言う慧を見ると、少し悲しそうで、そして悔しそうな顔をしていた

薄々気づいてたんだ
慧も杏に惹かれてるって

俺もきっとそうだ


曖昧だった感情は、さっき俺を救い上げてくれたあの時…確信に変わった


あぁ、俺、杏のこと好きなんだって


なのに俺は…咄嗟に動いてやることができなかった

呼吸が落ち着いてきた途端に、パタリと杏はベッドに倒れた。
え?と思ったが、泉が小さな声で、「寝た」そう言った


布団をかけ直して、じーっと泉は杏を見る

その目は愛しさよりも今は、心配が勝っていた。不安そうに見つめる泉