「ゆっくり、ゆっくりでいい」
背中をさする泉。杏は涙を流しながら苦しそうに息をする
俺は二人から少し離れる
こういう時でも泉は冷静で、そして頼りになる
「大丈夫だから。杏のせいじゃないから」
杏の顔を覗き込み泉はいう。それに答えるように杏は頭を縦に振る
俺は見ていることしかできなかった
隣で慧が俺にいう
「俺も同じこと今思ってる」
そう言う慧を見ると、少し悲しそうで、そして悔しそうな顔をしていた
薄々気づいてたんだ
慧も杏に惹かれてるって
俺もきっとそうだ
曖昧だった感情は、さっき俺を救い上げてくれたあの時…確信に変わった
あぁ、俺、杏のこと好きなんだって
なのに俺は…咄嗟に動いてやることができなかった
呼吸が落ち着いてきた途端に、パタリと杏はベッドに倒れた。
え?と思ったが、泉が小さな声で、「寝た」そう言った
布団をかけ直して、じーっと泉は杏を見る
その目は愛しさよりも今は、心配が勝っていた。不安そうに見つめる泉



