愛は惜しみなく与う②


後ろからスッと手を伸ばし、泉は杏の頭を抱えた


あの抗争の後、少ししてから、泉に幹部だけ呼ばれて話し合いをした


その内容はもちろん、黒蛇でみつけた杏の写真


それを黒蛇の仕業ではなく、泉はスコーピオンの仕業だと言った


詳しくは分からなかったが、一生懸命震える声を絞り出して杏が話す



「あ、あたしの…あたしのせいで、妹は…殺されたかもしれへん!!」



想像を超えてくる杏の過去に


全員が戸惑った


東堂財閥で、跡取りは妹
姉の杏には無関心だったため、杏は薔薇というチームをつくり自由に過ごす


そして…


妹はなぜか杏のせいで殺され…



そして杏が跡取りになった


そういう事だよな?


こんな小さな身体に、これだけの出来事が耐えられるわけがない


「い、泉。どうしよ。み、みんなが…はぁはぁ…サトルに狙われたら…ど、どうしたら…」


「杏!」


突然の異変に固まる
泉だけがサッと動き近くにあったスーパーの袋を杏の口にあてがう



過呼吸