「杏?」

「真っ赤な人が企んでるって…それきっとサトルのことや」


杏はそう言って突然自分の胸元に手を突っ込む


ちょ、ちょっと!

ここは普通の道端です!!
驚いて数人振り返る


「どうしたんです?」


杏は手に何か小さな紙をもっている。
そしてそれは



泣いている杏の写真だった



髪が長いからきっと…関西の時のだろうけど



どうしてこれを…




「サトルが動き出すんや。あたし……どうしよ」



震える手で写真を握る杏
写真の杏は、普通に涙を流して泣いている訳ではなく、なんというか…


絶望した顔をしている


趣味の悪い。もしかして、妹を目の前で亡くしたときの…写真ですかね。
そんなことさえ考えてしまう


私には手に負えない…


「泉?どれくらいで来れますか?」


「…目の前だ」


携帯から声が聞こえたのか、直接聞こえたのか

パッと前を見ると小走りで泉が駆けてきた


「おい、杏。大丈夫か?帰れるか?」


ここは国道沿いの歩道だ
交通量も、人も多い