「服着たまま直せへんし、新直して?」

そう言ってきた
もうほんとうに、やめてほしいです

ちょっとシリアスだったはずなんですがね
なんで私が照れなくちゃいけないんですか…


「ありがとう」


ふつうにお礼を言われて、よく分からない気持ちですね。
これはもう、みんな苦労することでしょう。

もし誰かと付き合ったとしても

苦労して悶える日々を送ることが、私の目には見えています



でもそろそろ
帰った方が良さそうな時間帯

裏の仕事の人たちがここにやってくる時間だ


「杏、今日は一旦帰りましょう」

「うん…せやな」


素直に頷いてくれたので、階段を登り地上へ出ようとした時、後ろで杏の小さな悲鳴が聞こえた


振り返ると杏は、胸元に手を当てている


そしてその背後にはさっきの情報屋の女が…



「怖がらしたお詫びよ。あなた気をつけたほうがいいわよ?真っ赤な人が何か企んでいるわ」



え?
どういうことです?と聞く前に、女はその場をスッと離れた

そして杏をみると、目を見開いてその場に立ち尽くしている