鈴様の面倒は…見てないよ

俺が毎日気にかけているのは、杏様だけです


「鈴ちゃんは、志木に懐いていたからね」


……こういう時どう返せばいいかわからない。
鈴様は…よく私と杏様に、倉庫へ連れて行けとゴネていた。

お嬢様が不良に憧れるという

そんな軽い感じだと思っていた


けど今思えば


鈴様は、杏様を…とても羨ましく思っていたのかもしれない。


「志木が使用人じゃなければ、鈴ちゃんと結婚して欲しいくらいだわ」


「はは。身に余るお言葉です」


鈴様から寄せられている好意は知っていた。
彼女は…私を好いていた。
それを知ってから、ふと見せる杏様への、嫉妬のような敵意ある目を…


私は見て見ぬ振りをした



「私が生涯尽くすと決めたのは、杏様だけです」



蘭様にそう伝えると、笑顔が少し固まり、話を逸らした。
蘭様は…


杏様を



杏様の存在を否定することで、気持ちを保っている


杏様がいなくなったと言い聞かせ


鈴様が生きていると言い聞かせて…


本当に



たまに殺してやりたくなるよ