一歩後ろに下がって、ゴトウと適度な距離を保って杏はスッと背筋を伸ばして立つ


その姿は本当に別人のようだった




「わたくし、東堂財閥5代目、東堂 杏と申します。この度はお父様の御身をお預かりさせて頂きたく参りました」



制服のスカートの端を持ち、少しスカートを上げて、杏はゴトウにお辞儀をした



どこかの身分の高いお嬢様のような振る舞い


いや、その通りなんだけど



こんな杏は見たことなかった




「あたしが責任を持って、2人のために…最高の治療を用意する。だから…ゴトウさんは、ぱぱちんの側についていてあげてよ」


頼むわ

困ったように杏は、ゴトウに手を差し伸べた

俺も杏の隣に立ってゴトウに頭を下げる



「親父にはゴトウが必要だ。杏は俺たちに、親子の未来をくれた」

どうすることもできないと思ってたし、親父も諦めていた


でも



「俺は、親父にもっと生きててほしいから。杏の世話になる。ゴトウも協力してくれ」


隣の杏は満足げな顔でニコニコしている