「君は…何者だ?」


親父が杏に尋ねるが、杏は少し悲しそうに笑っただけだった


「成功する可能性が低い手術の、成功率をあげれる腕の良い医者を知ってる。その人は一般の客は受けへんから、手術待ちとかない。

最後まで足掻くんやろ?ほな一緒にがんばろうよ。ゴトウさんに話してくるわ」


再び部屋を出る杏の姿は
いつもの杏でもなく、薔薇の総長をしていた強い杏でもなく…


東堂の名を背負う、立派な後ろ姿に見えた




「おい、泉。あの子は何者だ?」

「……東堂の、東堂財閥の後継だ」


俺の返答で親父は黙り込んだ。
明日、関西の東堂の病院へ移動


杏はきっと、親父が病気って分かったあの時、俺が親父に素直になったあの時


もうすでにこうする事を決めていたような気がする



「絶対手術なんか受けないって思ってた。なのにあの子の言葉で……生きていこうって思ったよ」


何かの縁だと思うから、彼女の言葉に甘えて、最後まで戦う


そう親父が言ってくれた