「杏に俺は毎日勇気をもらっている。今こうやって親父と話せてるのも、杏のおかげなんだ。だから……」
死なないでくれ、親父
杏がやり直せばいいって言ってくれたんだ。諦めるなって、言ってくれたんだ
「俺は親父に、この先も、見てて欲しい」
生きて、側で。
親父はフイっと窓の方に顔を向けて座ってしまった。
でもいいんだ。俺の気持ちは言えたから
あと半年
手術をしても、ほとんど成功しない手術
何が正解かは分からない
でも
「諦めんなよ、親父」
陰で見守ってるなんて、もうやめて、堂々と俺を見てろよ
これから先も…
「ほんとお前は、昔から生意気なガキだな」
え?
鼻にかかった親父の声
泣いてるのか?
「本当は怖くてな。自分が酷い父親だと気づいたのは、病気になってからだ。それまでは全く悪いと思ってなかった」
鼻で親父は笑う
病気になったのと、俺が家を出たのは同じくらい…
それまで気づかなかったことに俺はひくけどな



