「君を呼んだのは、これでもまぁ父親が死ぬとなると、さすがのこいつもメンタル弱りそうだからな。あんたにこいつを見ててほしくてな」


親父は杏にそう声をかけた
杏は唇をぎゅっと噛み、何かを堪えている


「ふん。これだけだ、言いたいことは。残り半年あるかは知らないが、好きにする。お前も、ゴトウに迷惑かけないようにしろ。俺が死ぬまで、蕪木組は存在しているんだからな」



……頭が回らないんだよ
モヤがかかって、何も考えられない

昔死ねばいいのにって何度も思った

こいつさえいなければって…



なのに


俺はただ叱られた子供だった

思った通りにならず、親父に支配されるのが嫌で逃げたただの子供


こうやって少し寄り添うだけで


親子としての気持ちが戻ってくることも知らなかった、ただのガキだ


「お、親父」

「お前から聞くことはもうない。何かあればゴトウを通せ。もう病院にもくるな」



やっと近づいたのに

こんなにも離れるなんて。もう二度と会えないなんて

突然言われても、理解できるわけないだろ