「大学に進学したいなら、別にその金もある。先のことは気にしなくていい。あと…


「待ってよ!なぁ、待ってってば」


杏が親父のベッドに駆け寄り、肩を掴む
少し驚いた顔をした親父は、優しく肩を掴む杏の腕をそっと自分から離した


「待てればいいけど、時間もない。もう待てないんだよ」

「なんちゅー顔して話してんねん!あたしらはそんな話しに来たんちゃう!」


どうして俺は動けないんだろうか
とても人ごとの様に親父の言葉が耳に入ってくる。
最後?時間がない?

それって



「あんた、死ぬのか?」



親父と呼べなかった。言葉にしたら現実になりそうで。



俺のその言葉を聞いて、親父は俺を真っ直ぐ見つめた。
昔と変わらぬ顔。でも少し弱々しくて、頬もこけている



「もってあと、半年だそうだ。治療をサボっていたからなぁ。手術も成功する確率は殆どないそうだ。だから…」


俺は何を聞かされている?
親父があと半年以内に死ぬ?


数日前…


ようやく何年かぶりに話せたのに?ようやく親父の気持ちに触れたのに?