「その時に、親切な男の人がオートロックを解除してくれて、中に入れてくれたんだ。それがあの人なんだけど」

朔も響も、あっ!と声を出した
思い出したよね

朔は、いい奴だったなっていってたし


「あの人ね、俺たちがエレベーターで8階のボタンを押したら、8階に住む女の子の友達なのかって聞かれたんだよ。1人っぽいから心配してたけど、こんなに友達いるなら安心だって…あの人そう俺たちにいったんだ」


俺の話を杏ちゃんは黙って聞いている。その表情は、さっきまでの笑顔はない


「その時ね、何か違和感を感じたんだけど、特に気にすることもないと思って何も言わなかった」


そう。あの時もっと気にしてればよかった


「笑う時にね、目が笑ってなかった。嘘の笑顔だったんだ。ただ愛想笑いが下手なのかと思ってたけど…今日杏ちゃんがあの人に反応しないから、なんだか胸騒ぎがして…あの人を追ってみたけど、どこにも居なかった」


あれはなんだか、杏ちゃんを監視しているような、そんな感じの目だった

うーーんと杏ちゃんは言いながら目を閉じた