「おい、起きろ」



遠くから声が聞こえてきて、軽く頬を叩かれる。



知らない人の声。
冷たい手が触れるから……私はゆっくり目を開けた。



「……ん」


ぼんやりした視界。
さらに頬を軽く叩かれて、瞬きを繰り返せばしっかり意識が戻ってくる。



視界に映る、見知らぬ男。
金髪で、スーツに身を包んだ男性。



「!?」


声が出なくて、手足がまったく動かせない。


足元に目を向けるとガムテープで何重にも巻かれて固定されていて、口元にもガムテープのようなものが貼ってある。


な、なにが起きたんだっけ!?




ここは車内。
窓から見えるのは、緑たくさんの景色。

坂道をのぼっているから……たぶん、山の中。


外はもう薄暗いから、意識があった頃からだいぶ時間がたっていそう。