「あ、春樹さん……」


どうしても伝えたいことがあって、私の部屋を出ていく前に声をかけた。


「なんですか?」
「……暁、もし帰ってきたら部屋に入れないでほしい」


これが、どうしても伝えたかったこと。
私が寝込んでいる間に暁が完治して帰ってくることもあるだろうから、言っておきたかった。



「若頭ならもう──」
「俺がなんだって?」






春樹さんの言葉は遮られた。

……暁の声によって。



心臓がドキッと大きく飛び跳ねた。
まさか、その声が今聞こえてくるとはぜんぜん予想もしていなかったから。



声がしたのは、部屋の襖のほうで。
そこへと目を向けると……暁は、いた。