一途な執事と甘いティータイム




「有嶋じゃない。"悠生"」



私に顔を近づけて、そうゆっくりと発音してくる。



口をすぼめて発音する、その名前。



それがキス顔と重なって、また記憶が掘り起こされる。



みるみるうちに熱くなる体。



早く距離を取りたくて、コクコクと大きく首を縦に振る。



「よし、聞き分けがいいね」



……やっぱり、ムカつく。



「有し…じゃなくて、ゆ、悠生だけずるい。ポテチ、私にも食べさせてくださいっ」



「ん、よく言えました。はい、あーん」



あー、……ん?



「ち、違う!!自分で食べるから!」



さも当たり前かのようにポテトチップスを持った手を近づけてきて、私は手を出して止めにかかる。



「違う?食べさせてくださいって言ったよね?」



少し前の自分を殴ってやりたい。



いや、勘違いにも程がある有嶋を蹴り飛ばしてやりたい。