「それでだ。有嶋くん」



「はい」



へぇー、この人"有嶋(ありしま)"って言うんだ。



お父さんに呼ばれて、初めて名前を知る。



お父さんが知っているということは、やっぱりここの執事らしい。



しかも2人の様子を見ていると、だいぶ前から知り合いのような雰囲気だった。



「君には今日から菓乃の専属執事になってもらいたいんだ。その方がこれからを考えると安心だからね」



「えっ?」



「わかりました。 よろしくお願いします、菓乃お嬢様」



いやいやいや、待って?



「勝手に決めないでよ、お父さん!」



なんだろう、私に微笑む有嶋さん……がこれから私の専属執事になるのはなんだか嫌だ。



「有嶋くんはこの春から高校3年生で星華学園に通っている。歳も近いし、どこにいても守ってもらえるからいいだろう」



その言葉で、なんで今回私が公立高校を受験させてもらえたのか、なんで星華学園だったのか、その理由が全てわかった気がした。