「それで、その有嶋先輩のことを菓乃はどう思ってるの?」



「ど、どうって……」



私にとって有嶋は専属執事というだけ。



それなのに、あんなことしてくるから。



「特に何も……」



「何も思ってないけどドキドキしちゃってるの?」



んん、なんかそう言われると事実ではあるけれど、本当のことだからこそ恥ずかしい。



「これは恋の始まりだねぇ」



「そんなことないからっ!」



私が有嶋のことを好きになる……?



そんなこと、ない!ないよ!!



天と地がひっくり返ったとしてもない───はず。



「ただ、そのおでこにキスをしてきた有嶋先輩は少なからず菓乃に好意は抱いてると思うよ?」



「えぇ……」



それも困る。



あの?



私にあたり強くて、ムカつくことばっかりしてくる有嶋が?



モクモクモクと頭の中に浮かんできた妄想を手でブンブンと追い払う。



それこそ、ぜーったいにありえないんだから!



そんな葛藤する私をよそに、美菜子はこれからどうなるか楽しみだと心を躍らせていた。