「旦那様……どうか今日付けで執事を辞めさせてください」
「えぇっ!?」
予想もしない言葉が神山さんの口から飛び出した。
神山さんが執事を辞める!?
確かにもう白髪も生えたおじいちゃんで、たまに腰にもくるとは言っているのを聞いたことがあるけれど、まさか突然そんな話を聞いてしまうなんて思ってもいなかった。
「菓乃お嬢様っ……」
驚きのあまり大きな声を出してしまったせいで、私たちが部屋の隅にいることが神山さんとお父さんにバレてしまった。
「あのー、ごめんなさい。本当は聞くつもりはなかったんだけど……」
そう、私はこの部屋から出ようとしたんだ。
それを止めたのは、隣にいるこの人。
この人が悪いんだと、私は横目で名前の知らない新人さんを睨みつける。
「申し訳ありません。菓乃お嬢様を無事に見つけましたのでご報告に来たのですが、声をかけるタイミングを見失ってしまったもので…」
「いいんだ。娘を見つけてくれてありがとう。それはそうと菓乃!お前は何度神山さんや他の人たちに迷惑をかけたら気が済むんだ!」
やっぱり怒られるのは私だ。



