「ちょっ……ははっ、大丈夫?」



「なっ、ちょっと笑いすぎじゃ……」




そんな私を横で笑う有嶋。



その笑顔はとても見覚えがあった。



懐かしい───そんな、笑顔。



私が好きだった、あのお兄ちゃんの。




「やっぱり笑ってた方がいい」



「……」



「いや、なんでも……」




聞き覚えのある自分の言葉になんだか恥ずかしくなって口をつぐむ。




「懐かしいな、その台詞」




夜空を見上げて、遠い昔のことを思い出す有嶋。



有嶋もあの日のことを覚えてたんだ。




「菓乃は俺を笑顔にする魔法が使える」




あの日も有嶋は私にそんなことを言っていた気がする。




「菓乃といると落ち着くんだよ。またこうして会えたことは奇跡だと思ってる」




有嶋に真っ直ぐ目を見られると、そこから逃れられない。