「はい」
「何、これ?」
何かされると身構えていたのに、サッと差し出してきたのは小さな缶ジュース。
「何ってサイダーです。さっき菓乃お嬢様が寝ている時に買ってきました」
確かに教室もホコリっぽいし、喉がカラカラだ。
口の中がスッキリする炭酸はすごく嬉しい。
さっきの怖かった出来事も嫌な感触も全て洗い流してくれそう。
これを飲んで全て忘れてリセットしよう。
プルタブに指をひっかけてプシュッと音を立てながら缶を開ける。
「あっ、さっき走って戻ってきたので……」
「きゃ、冷たっ」
有嶋からの忠告は少し遅かった。
走った時に振られてしまっていたのか、開いたと同時に吹き出してきた白い泡。
それが見事にスカートにかかり、制服を濡らしてしまった。



