ゆっくりと朝食をとり、そろそろ家を出る時間だ。
学校まで高級車で送ってもらう…というのが当たり前だったけれど、それでは私の"普通の高校生活"にならない。
意見を貫いて、普通の人と同じ電車通学にさせてもらった。
「そろそろ行きますよ、菓乃お嬢様」
「はいはい、わかったから呼ばないで。特に外では絶対に!」
「わかりましたけど……それ、変装しているおつもりですか?」
そう有嶋が指摘するのは、私の格好。
あまり外には顔を出していないとはいえ、私が有名化粧品ブランドを経営する桜宮グループの娘だと知っている人がいてもおかしくはない。
だから、バレないようにと変装してみたつもりだったのだけれど。
「だてめがねでは、顔がバレバレですよ」
うん、わかってはいた。
多少印象は変わるけれど、よく見ればただの私だ。



