先生からの合図で1度閉められていたドアがまた開く。
特に女子はそのドアに釘付けになっていた。
開かれたドアから一歩ずつ教室に入ってくる転校生。
その顔が明らかになった途端、教室内からは歓声が上がった。
そんな騒ぎ立てる程イケメンな転校生って?
そう思って顔を上げてみる。
「……げっ」
低い私の絶望感満載の声が、甲高い歓声の中に消えていった。
あの顔はよく見覚えがある。
この夏休みも見かけたあの顔。
休み前に席替えをして、席が離れてしまった美菜子は振り向いて、遠くから私に視線で合図を送ってきた。
美菜子は夏休み中、海水浴場で1度会っている。
美菜子からは"あの人だよね?"と確認するかのような目で訴えかけてきている。
私は伝わるようにコクンと頷いた。
最悪だ。
まって、もしかしてあのセリフって……
不意に思い出した、海水浴場で去り際に言われたあれ。
"今度からは一緒に居られるから。"
これって、まさかこういうこと?
「初めまして、大河 大夢です」



