「はぁ、はぁ……」
家から駅までは遠くはないけれど、それなりに距離はある。
ずっと走り続けるにはかなり体力を消費してしまう。
それなのに疲れも知らず私の数歩前を走り続ける有嶋。
「ちょ、ちょっと待ってっ!」
これ以上後を付いて行くのはかなり厳しい。
「仕方ありませんね。手をお貸しください」
「…手って……っ!?」
予想外のお願いに戸惑いを隠せないでいると、不意に掴まれた私の右手。
グイッと引かれたその力に、有嶋も男子なのだと感じた。
なんとかギリギリセーフで乗らなければいけない電車に乗り込むことができた。
「……わっ」
乗ることはできたものの、通勤通学ラッシュの満員電車は落ち着いて座る席もない。
動く電車の中では足元も安定しなくて、体がふらついてしまう。
「本当に手がかかりますね。早く腕にお掴まりください」
「……っ」



