膝立ちの体勢から案外あっさりと立ち上がった津田は、箱を大事そうにポケットにしまい込む。
いくら大事そうにしていても、しまう場所がズボンのポケットというのはどうなんだと思わないこともないけれど、それを言ったらまた夏歩の意図とは違う意味に取られてしまいそうだったので、黙っておく。
まあ、どこにしまおうと、大事にしているのは充分伝わっているので良しとする。
「さてと、じゃあ今日はこの辺で帰るとしますか。また何かすっばらしいアイディアを考えておくよ。なっちゃんが思わず受け取っちゃうようなやつをさ」
「どうせまた姑息なことしようとしてるんでしょ。ほんっと性格がよろしくないよね、津田くんは」
「そう言うなっちゃんは、ほんっっと素直じゃないよね」
笑いながら言い返され、夏歩はキッと津田を睨む。津田は全く動じることなく
「ところで、明日の朝は何が食べたい?」
いつものように、当たり前のようにそう問いかける。
また来る気なのかなんて、わかりきったことをもう夏歩は言わない。しばらく津田を睨んだまま考えて
「オムレツとバタートースト」