その話題に全力で拒否の姿勢を示しても、「それからその人ね」と美織の話は終わらない。


「津田と同じで、料理が上手いの。この間ね、朝にやってる料理番組に出てたんだけど、中々の包丁さばきだったわよ」


だから何だという意味を込めて、夏歩はちょっぴり鋭い視線を美織に送る。
でも、伝わらなかったのかそれともスルーされたのか、美織の話は終わらない。


「あとね、その俳優、趣味は家の掃除とか洗濯とかで、家事全般が好きなんですって。だから若い子だけじゃなくて、奥様世代の人気も凄いらしいわよ」

「だからなに」


もう仕方がないので、声に出して言ってやる。これで間違いなく伝わっただろうと思ったが、だからって美織の話が終わるとは限らないことを夏歩は失念していた。


「一途かどうかはテレビで見ただけじゃわからないけど、でもそれ以外のところは津田にそっくりよね。社内に狙ってる人、いっぱいいそうじゃない?その中でも特に押しの強い子に、言い寄られたりしてたら……」

「でも美織、津田くんは一途だって言っ、あっ……」


言った瞬間、美織の口角がニヤアと上がった。それでまずったことに気が付いても、もう遅い。