夏歩はベッドから降りてクローゼットに向かい、着替えを取り出して洗面所に向かう。

津田がいないのだから着替えは部屋でしてもいいのに、ついいつもの癖で洗面所で着替えまで済ませてから部屋に戻る。

その前に念の為、トイレとお風呂場も覗いてみたし、玄関に靴があるかどうかも確認しに行ったが、やはり今日は津田が来ていないことがわかった。

部屋に入ってドアを閉める直前に、夏歩はちょっとだけ振り返ってみる。

廊下の先に玄関があって、そのピッタリと閉じられたドアを見つめていると、「遅れてごめん!」と寝ぐせのついたままの頭で飛び込んでくる津田の姿が浮かんだ。

でも、幾ら待っても玄関のドアが開くことはないので、しばらくして夏歩は部屋のドアを閉めた。

部屋に入ってまず向かったのはベッドで、もちろんそれは二度寝をする為ではなく、持っていた部屋着をベッドの上に放ってから、スマートフォンを手に取る。

津田からの連絡は、ない。


「…………」


なんだろう、いればいたで何でいるのかと思うのに、毎度勝手に入ってくるなと苛立ちもするのに、連絡もなしに来ないとなると、妙にモヤモヤする。