夏歩は、ヘラっと笑う津田を睨みつける。
その瞬間、嬉しいのを我慢しているという美織の言葉が蘇って、夏歩は慌てて視線を逸らした。


「どうかした?」

「……別に」


視線を逸らしたままでポツリと答えた夏歩を訝しく思いながらも、津田はそれ以上何も言わなかった。

他愛のない話をして、夏歩のお椀が空になればおかわりをよそい、楽しそうに笑って、美味しそうに鍋を食べる。

あらかた具材が片付いたところで津田が


「なっちゃん、締めはうどんを用意したんだけど、食べられそう?」


正直夏歩はお腹がいっぱいだったけれど、せっかくなら締めまでいただきたかったので「少な目で」と答えた。

了解、と立ち上がった津田は、もうそれほど熱くなくなった土鍋を素手で掴んでキッチンに運び、コンロに載せて火をつける。

冷蔵庫から三食セットのうどんを一食分だけ取り出すと、それを土鍋に投入して菜箸でほぐすように混ぜた。