ただ聞いただけじゃなく、あいつが合格証明まで見せてきたからそれは確かだ。
……なのになんで、藤二に通ってんだよ。
俺と別れてから志望校を変えた?
いや、いくらなんでも無理だろ。もうすでに合格決まってたし、そもそも、藤二は私立だ。
「……、なあ」
あいつは元々私立に進む気がなかった。
というのも、そうなれば必然的にかかってくる金が桁違いになるからで。生活費を削って暮らしていたあいつが、わざわざ金のかかる方を選んだりはしない。
「なずな、ちょっと手ぇ貸してくんね?」
「……内容によるよ」
「マンションの契約者調べといてほしいんだよ。
あいつらが住んでるマンションの」
あのアパートに住んでいた鞠が。
あきらかに家賃が月15万は下らない、広々としたマンションを契約する意味がない。
「親じゃないの?」
「あいつんとこシングルマザーなんだよ。
しかも……母親、会わねー間に亡くなってた」
ピリッと、空気が張り詰める。
「……調べていいの?それ。
かってに色々調べたら、怒られるかもよ」
「怒るだろーな」
でもいい。
……もう、後悔するのだけはごめんなんだよ。