「わたし本気よ? 恭」



「そういうのうぜーから無理」



普通に美人だってのは知ってるけど。

マジで、まったく、興味なんてなかった。……それが劇的に変化したのは、夏休みのことだった。



俺は夏休みも家にいる気はなくて。

学校に来て、その日は暑さのあまり屋上にも旧音楽室にもじっとしていられず、エアコンのつく保健室にこもっていた。



「失礼します」



そんな中、保健室に来たのがアイツだった。

なんで夏休みまでいるんだよとため息をつきたくなるが、保健医と話しているのをカーテン越しに盗み聞きしたところによれば、雑用に駆り出されたらしい。



……馬鹿だろ。

それって押し付けられてる、っつーんだよ。




教師にいいように使われてる。

優等生っていう面目があるから、それを利用されてる。



「あ、先生。

うちのクラスにいる花蔵恭って知ってます?」



不意に。変わった話題に、おどろいた。

……まさかここで、俺の名前が出てくるとは。



「知ってるよ。彼がどうかしたの?」



「んー、夏休みはさすがに来てないのかなぁって。

さっき女の子たちが恭のこと悪く言ってるの聞いちゃったんですよね。……カッとなって言い返したときに、思いっきり机にバンッって手ついちゃって」



「……ああ、それで手のひら怪我したの?

こうなるってことは、よっぽど強く叩いたよね」



「だってムカつくじゃないですか。

何も知らないのに、恭のこと悪く言われて」