わたしと手を繋ぐのとは反対の手で、恭の手をとる蒔。
にこにこと手を振る蒔にみんな手を振り返してくれて、その場からマンションへと足を向けるけれど。帰り道の数分間、わたしと恭の間に会話はない。
「きょーちゃん、もうお家来ないの?」
「あー……そー、だな」
「……? きてほしいなぁ」
無垢な笑みを見て、胸の奥がつっと引き攣るような感覚を覚える。
まだ小学1年生の女の子。彼氏彼女やら付き合った別れたやら、そんな話はむずかしくてわからないだろう。
「おねえちゃん。
きょーちゃんと、喧嘩したの?」
無垢に問いかけに、曖昧な笑みしか返せなかった。
恭はわたしたちの関係を「喧嘩」ととらえられたことが面白かったのか、小さく笑ってみせたけど。
「蒔」
ここに住んでる、とマンションを指させば。
何か言いたげな顔をした恭は蒔の前で屈んで目線を合わせると、今度は優しく笑ってみせた。
「喧嘩したわけじゃねーよ。
ただ、蒔が思ってるように、前みたいに仲良しじゃないだけ」
「……、うん」
「安心しろ。
俺は、お前の大好きなお姉ちゃんのこと、嫌いになんてなってねーから」
わかったか?と、恭が蒔の顔をのぞき込む。
恭の「嫌いになってない」って言葉にも、こくこくと頷いている蒔にも、何も言えなくなって口を閉ざした。
「……じゃあ、またな。蒔。鞠」



