「恭、なんで別れたの?」
「こいつに聞けば? 俺フッた側じゃねーし」
視線を上げることもなく言う恭。
興味なし、って顔。……なら隣に座らなくてもいいじゃない。ほかにも座れるような場所あったでしょ。なんであえてわたしの隣に来るのよ。
「へえ、彼女の方からフッたんだ~?
美人だねえ。もしかしてほかに男つくった?」
「デリカシーないって言われない?
本当に男つくって別れてたら、今どう考えてもここで隣に座ってるのおかしいと思うんだけど」
「はっきり言うねえ。
……あすみ、ちょっとは興味持てよ~」
ふっと笑ってそう話し掛けられたあすみくんは、面倒そうに顔を顰めて。
「ああ、」と何か思い出したようにつぶやいたあと。おもむろに席を立った。
「あすみんどこ行くのー?」
「別にどこも行かねえよ」
「ならなんで席立ってんだよ~」
みんなに何を言われても特に動じることなく。
今日もさらさらの黒髪と綺麗な顔が視線を集める中。「どこも行かない」という言葉通り、彼が足を止めたのは、わたしのすぐそばで。
「昨日のことで話がある。
……あとで数分、付き合ってくれないか?」
こそ、と耳打ちしてきた。
昨日あすみくんと会ったことを恭に知られたくない、というわたしの気持ちを、汲んでくれたらしい。
だからこそっと耳打ちしてくれたようなのだけれど。



