それはきっと、蒔も同じなんだろう。
「おねえちゃん」
21時前。
蒔とお風呂に入って髪を乾かしてあげたあと、それぞれ自室に入った。蒔はおそらく明日の支度をしているんだろうし、わたしは課題中。
教科書を広げていたら、かちゃりと開いた自室の扉。
振り返れば眠そうな蒔が入ってきて、「いっしょに寝ていい?」とわたしを見る。
「いいわよ。おいで」
ひとりで眠れないわけじゃないけど、こうやってわたしのところに来る彼女。
それが不安からくるものだって、わたしがいちばんわかってる。
課題の手を止めて蒔とベッドに入り、ベッドサイドのライト以外の照明を落とす。
よしよしと頭を撫でるわたしの服をきゅっと握った蒔は、「おやすみなさい」と目を閉じた。
「おやすみ」
ひとりで使うには広すぎる自室。
ひとりで使うには大きすぎるベッド。
わたしたちが欲しかったのはきっとそんなものじゃなくて。
でも、わがままを言える立場ですらなかった。
本来なら、はなればなれになってたかもしれない。
だから蒔といま一緒にいられるなら、わがままなんて言ってられない。
蒔には本当のことを話さなくていい。
だって間違いなく、蒔は傷つくから。
「おかあ、さん……」
小さな寝言に、ぐっと苦しくなる。
この息苦しさを知っているのは、わたしだけでいい。



