「あのねっ、

なかよしのお友だちと近くになった!」



「ふふっ。お利口にしてたからね」



えへへと笑うかわいい蒔。ああもう、うちの妹はかわいい。

手を洗ってから夕飯の準備に取り掛かろうとすれば、蒔が「おてつだいするー!」と駆け寄ってくる。



「お手伝いしてくれるの?

じゃあ、その前に手洗ってきて?」



「はぁい!」



ぱたぱたと遠ざかる足音に、くすりと笑みが漏れた。

蒔がいてくれるから、わたしはこんなにもしあわせに笑っていられるわけで。



何があっても蒔の笑顔だけは、絶やしたくない。

蒔が笑ってくれるなら、わたしはどんなことだって惜しまないから。




「あらってきたよー」



「よし、なら一緒に野菜切ろっか」



カウンターの前に置いてある台の上にひょこっと乗った蒔に夕飯のサラダの手伝いをしてもらう。

さすがに包丁をひとりで使わせるのは危ないから、うしろから手を添えてゆっくり教えてあげれば、蒔は慎重に包丁を使う。



その眼差しがあまりにも真剣で、彼女に気づかれないように忍び笑い。

「上手」って褒めてあげれば、もっともっとって率先してほかの作業も手伝おうとしてくれる。



「ん、ありがとう。

でも火を使うのはあぶないから、また今度時間があるときにゆっくり一緒にやろうね。お箸とかコップとか、出しておいてくれる?」



わたしの言葉に、素直に「はぁい」と返事する蒔。

手を洗って言った通り食器棚を開けているのを横目に、ガスの元栓を捻った。



中学生の頃に住んでいたアパートよりも、圧倒的に広いマンション。

使っていないスペースの方が多いと、ふいに、自分の世界の広さに不安になる。