はじめての感触にくちびるを引き結ぶけど、まるで効果がない。
手の甲で口元を覆っても声はたやすくすり抜けて、ふたりきりの部屋の中を、ひどく甘くしていく。
「……鞠」
黒いベッドシーツの上に、派手なピンクの髪が散らばる。
深まるキスに溺れながら見上げた金髪はやっぱりキラキラしていて、綺麗で。
「っ……恭、」
密に絡んだ指先から伝わるように全身が汗ばむ。
どちらのものかもわからない吐息があふれて、現実か夢か、部屋の中に甘い匂いが満ちていく。
「んっ、……、好きって、言って……」
五感すべてを最大限まで刺激されてるみたいで、どうにかなりそうだった。
どこも溶けてはいないのに、とろけていく感覚に陥って、頭の中が熱い。
「っ…痛、」
はやく繋がりたいのに、はじめての痛みに顔を歪めれば、恭は大丈夫か?って聞いてくれる。
大丈夫かどうかで尋ねられたら大丈夫ではなかったけど、それでも恭が相手だったから、許せた。
恭だったから、その痛みでさえ愛おしくて。
「鞠……」
「っ、恭、好き……だいすき」
「……ああ、俺も」
恭だったから、こんなにもしあわせだった。



