後日お邪魔した恭の家は、大きな一軒家だった。

古ぼけたアパートに住んでいる我が家に来てもらうなんて申し訳ないなと思いながら、持っていた紙袋を恭に差し出す。



「はいこれ手土産」



「……いい、っつっただろ」



「って言うと思ったから。紙袋の中身見て?」



持ち手を左右に広げて中身を見せる。

ひょいっとそれを覗き込んだ恭は、詰め込まれたタッパーを見て「手料理?」と首をかしげた。



「そう、手料理。

できるだけご飯に合うようなものばっかり作ったから、白米さえあればいっぱい食べられるよ。育ち盛りだから、全然足りないかもしれないけど」



だから手土産というよりは、解凍すれば食べられる彼への差し入れ。

「恭放っておくと全然ご飯食べないから」って言うわたしを、彼は優しく抱きしめてくれて。




「こんなに作んの大変だっただろ。

でも……お前のそういうとこ、すげー好き」



「恭のためだもん。なくなったら言ってね。

また言ってくれたら作って渡すから」



恭と一緒にいられるのが嬉しい。

だから、こんなことなら、いくらでも出来る。



「恭……」



彼の部屋に行って、ふたりきり。

シンとした世界は学校にいる時のわたしたちみたいで、だけどここは、自由を制限されたりしない。



「……優しくする」



意図的に薄暗くした部屋の中。

耳元でささやかれた声は、すごく甘くて。