今夜この場でチームを解散させ、これ以降は藍華に勝負をけしかけてこないこと。
もしくは、チーム存続は可能だが、今後一切武器の使用はしないこと、及び藍華の傘下として支配下に置かれること。
どちらの条件をのんでも、以後藍華の周囲の人間には関わらないこと。
……これは、あすみが鞠やリカのことを考えた結果だろう。普段のあすみは、そんな誓約はさせない。
「わかった。今夜この場でチームを解散させる」
「……良いんだな。
下っ端の人間の意見も聞かないで解散させて」
「下の人間なんてそんなもんだろ」
その言葉に、小さくため息をついた。
藍華は確かに総長や幹部という格差はあるものの、全員の仲間意識はかなり強い。下っ端を守るのは幹部において当然の役目で、逆もまた然りだ。
そうやって藍華は歴史を繰り返してきた。
それこそ、スズさんやみちるさんのようなOBと仲が良いのも、その仲間意識あってこそだと思う。
「なら、その条件に従って誓約を結ぶ」
なずなが席を立って、俺の隣に戻ってくる。
総長同士の誓約が、間もなく成立する。相手側の幹部のひとりが、署名させるための紙を取るために立ち上がり、そのままこちら側へ戻ってきた時。
「絶対に、やると思った」
俺らの後ろ側を、通ったタイミング。
俺の真横にいたなずなは、振り返ってその男の手首をしっかりと掴んでいた。……そして。
「っ、お前、ふざけてんじゃねえぞ」
男の手に握られていた小型のナイフ。その刃先が、がっつりと俺に向けられていた。
めずらしく暖が感情的になって男を殴ると、その勢いでナイフが手から落ちる。
「君たちはやたらと恭に執着してる。
だから"何か"起こるとすれば、絶対に恭が危ない」



