誰かが隠れている様子もねーし、急にシンとした空間が続く。
そのまま廊下を突き当たりまで行けば、部屋の扉に行き着いた。……間違いなく、ここが幹部室だ。
なずなと目で会話して、扉に手をかける。
それから、バン!と勢いよく扉を開いたが、入口にいた男たちのように、突然飛びかかってくることは無い。それを確認して、なずなと部屋に踏み入る。
「ようこそ、藍華幹部のおふたり」
「……随分余裕そうだね。
俺らがここまで来たってことは、そこそこに攻め入られてる証拠だと思うんだけど?」
中には藍華と同じく幹部が5人。
余裕げなその瞳で、一体何を隠しているのか。
「本来なら、ここにお姫様がいるはずなんだが……
どうやらウチの下っ端がしくじったらしくてね」
鞠を攫おうとしていたのは、やはり上の指示。
どういうつもりだと眉間を寄せれば、「そんな怒らないでよ」と窘められる。……いや、自分の女に手出されかけてんだから、怒るに決まってんだろ。
「だから、もう仕方ない。
どうしたって、俺らに勝ち目はない」
「………」
「色々考えたが、素直に諦めるのが最善だろう。
そうすれば君たちの手を煩わせなくて済む」
「……なら、今すぐ下の人間に休戦の合図を。
あすみが着いた頃だろうから、直接幹部を全員ここに呼ぶ」
そうなずなが言えば、相手は大人しくそれに従った。
幹部室内の電話で工場内への放送ができるらしく、休戦が告げられる。そしてなずなからの電話で、幹部全員がここに集められた。
「最後に悪あがきしたが、
やはり真の正義感には勝てないものだな」
総長がそう言ってるが、俺はどうも違和感を拭えない。
ずっと眉間を寄せる俺の目の前で、なずなが間を取り持って、総長同士で話が進んでいく。



