全員を招集し、一度バイクまで引き戻させる。
それから再度指示を出して、バイクのエンジンを掛けさせた。
「こっちの目が慣れてねーなら、
慣れた方の目を潰してやるまでだろ」
約20台のバイクのヘッドライトが点灯する。
そうすれば、入口を開けたままにしているおかげで、廃工場の中はかなり明るくなった。
「行くぞお前ら!
光の眩しさで目が慣れてねーヤツらをさっさと始末して、見つけ次第工場内の明かりをつけろ!」
「了解っす!!」
同じ手は何度も使えない。
俺ら一番隊の役目は、いかに有利な状態に持って行って、二番隊と三番隊に引き継げるかだ。ただ突っ込むだけなら、指示棟なんてものは必要ない。
工場内に再度足を踏み入れると、そこそこの人数が待ち構えていて。
はやくも目が慣れ始めている連中を、片っ端から拳と蹴りで沈めていく。
「念の為、一人で行動はすんなよ!」
工場内に飛び交う罵声と呻き声と、骨が軋むような鈍い音。
鞠にはこんなとこ見せられねーなと思いながら、不意にふっと笑みが漏れる。……喧嘩中だろうとこんな事が頭に浮かぶくらい、思考は鞠でいっぱいらしい。
『待ってるから。
……絶対わたしのところに帰ってきてね』
鞠の性格上、心配してない訳がないのに。
俺の気持ちを汲んで、送り出してくれた。……なら。
「応えてやらねーと、な」
バチッと音がして、工場内の明かりがつく。
平気で振り下ろされるバットやパイプを避けながら、状況を冷静に判断する。間もなくチカが到着するだろうから、多少の人数不利はそこで補うとして。
チカと同時になずなが来るから、そこからの指示はなずなに繋いだ方がいい。
つーか、工場内が広すぎて奥の様子わかんねーしな。



