各々メンテナンスを終え、幹部で打ち合わせをしていればいよいよ出発の時間になる。
今回もいつも通り。ただ、違うことと言えば、珍しくなずなが現場に出向くということだ。……よっぽど退屈してんだな。
「恭。頼んだぞ」
「誰に言ってんだよ、あすみ」
ふっと笑ったあすみが、全員に出発をかける。
その合図で、一番隊がバイクを走らせた。
前回は廃校だったが、今回は相手のたまり場に直接乗り込む。
たまり場もチームによってバラつきがあるから、俺らはちょっとした倉庫みたいなもんだけど、向こうは廃工場を使ってるらしい。
「……なんかあります、
って言ってるようなもんじゃねーか」
たどり着けば、そこそこにデカい工場。
ただ、中は灯りがひとつもついてねーし、真っ暗だ。バイクを工場の前に停めて、入口の前に立つ。
「開けますか? 恭さん」
「ったりめーだろ?
……両側から一気に開けろ。あと、お前ら全員、俺からちょっと距離とってろ」
指示を出して、両側から一気に開けさせる。
そしてひとりで先に工場の中へと足を一歩踏み出した瞬間、感じた気配で右から左へと流れるように蹴りを入れると、男がふたり吹っ飛んだ。
「やっぱりな。
闇討ちなんて相変わらず卑怯じゃねーか」
カランカラン!と。
男たちが吹き飛んだ際に派手な音を立てて落ちた物体を拾ってみれば、鉄パイプ。……こんなんで暗闇から殴られたら、怪我待ったナシだ。
「お前ら。ちょっとこっち来い」
今回は上手く避けられたものの、全部が全部避けられるなんて思ってない。
しかも俺には、下っ端をできる限り守るという使命までついてる。安易に中には入れない。



