「おかえりなさいませ、鞠お嬢様」
「ただいま。蒔は?」
「先ほどご帰宅なさり、今は宿題を」
家の鍵を開けると、お手伝いさんが迎えてくれる。
宿題をしているなら自室にいるだろうし、わざわざ呼ばなくてもいいか。……蒔は恭に懐いてるけど、恭は今回じゃなくてもよく遊びに来てくれるし。
「じゃあ、僕らは藍華にもどるよー」
「……うん。3人ともありがとう」
改めて3人にお礼を言えば、なんでもないような顔で「気にするな」と言ってくれる。
出会った時は随分と素っ気なくしてしまったのも記憶に新しいけれど、今はこの人たちと出会えて良かったと素直に思える。
「鞠。……今日は、何がなんでも外に出るなよ」
「わかってるわ。ちゃんと待ってる」
「仮にあすみから呼び出しをくらっても、な。
本当に"藍華"の人間だったら、もし今日何かあった場合には、絶対にお前を迎えに来る。だから誰かに呼び出されたら、まず嘘だと思え」
簡単に信じるなよ?と。
執拗に忠告してくれる恭と、外に出ないと約束して。
「……デートの約束守ってね」
「守る、って何度も言っただろ」
扉の前で一度ぎゅっとしてから、3人を見送った。
──決戦の時間まで、残り3時間。



