恭たちに促され、待っていた橘花の送迎車まで向かう。

彼等が家まで一緒に来てくれることを伝えて、車に乗り込んだ。後部座席からちらりと振り返れば、バイクに跨って何か話している3人。



……前に、わたしを助けられなかったこと。

恭は何度も謝ってくれたけれど、それに対して"どうして助けてくれなかったの"なんて思ったことはもちろんない。



それでも。

今回恭が助けに来てくれたことが本当に嬉しくて。



「さすがに何もなかったな」



「ま、そりゃあねえ」



15分ほどで何も無くたどり着いた自宅マンション。

送迎してくれた橘花の人間には、もう大丈夫だからと先に帰ってもらって。4人で一緒にマンションの中へと足を踏み入れる。



前よりも圧倒的にセキュリティレベルの高いマンション。

普段は送迎係が責任を持って家の前まで送り届けてくれることもあって、"あの日"のようにマンションの中での他人との接触に怯える必要もない。




……まあ、かなりの高級マンションとあってプライベートは気遣われているし。

マンション内で誰かに会うこと、ほぼ無いんだけど。



「恭から聞いてはいたけどよ~。

ほんとにすげえとこ引っ越したんだねえ」



「前のマンションも僕らからすれば凄かったけどねー」



恭は付き合ってから何度か家に来てくれているし。

あすみくんも、橘花のセキュリティが上がったから護衛は必要ないと伝えたときに、日常生活で危険なタイミングが無いか確認するために恭と来てくれた。



あすみくんにとって最も大切なのはリカちゃんだけど。

恭の彼女であることと、"あの日"のことを知ってくれているから、わたしのこともとても気にかけてくれているみたいだ。



「……もしかして、この階丸々橘花家?」



そしてはじめてここに来た暖くんとチカくんは、終始目をぱちぱちさせていた。

……こう考えると、「すげーな」とは言ってたものの特にびっくりした様子がなかった恭は、やっぱりフルールの息子なんだと思う。