「な、なんでここにいるんだよ……!」



「お姫様の学校も顔も知ってて。

関わりがあるのはわかってるのに、その弱みに漬け込んでこない相手なんか、まあいないよねー」



「……、」



「予測通りの動きしてくれてどうもアリガト。

……ちなみに早く姫を降ろさねえと、ウチの一番隊長が本気でキレちゃうよ?」



暖くんの脅し文句に、男たちが焦ってる。

それでもなかなか降ろしてもらえなくてどうすればいいんだろうと思っていれば、恭が不敵な笑みを見せた。



「じゃあ、それが"答え"っつーことで」



男からようやく降ろされる。

けれどわたしを簡単に渡すつもりはないようで、周りを男たちに囲まれた。




「鞠。3分で片付けるから、目瞑ってろ」



"あの日"黒田さんに助けてもらった時も、同じことを言われたのを憶えてる。

だから自然と、何も怖くなかった。



「……3分だからね」



「わかってるっての。

……先に攫おうとしてんだから、俺らは先に手出ししてねーよな?暖」



「まあ、そうでしょうねえ」



目を閉じれば、聞こえるふたりのやり取り。

そして間もなくすぐそばで聞こえる鈍い音と苦しげな声に、思わず身体が縮こまるけれど。



「目ぇ開けていいぞ、鞠」