男のひとりに身体を持ち上げられ、じたばたと暴れる。

触られたことに対する嫌悪感。とても不快で、余計に暴れるわたしに、男が「うるせえよ」と少し大きめの声を出した。



その瞬間。



「っ、」



──脳裏によぎる、"あの日"の記憶。

最近やっと、忘れてきたところだったのに。



恭のおかげで、気にならなくなった。

夜だって安心して眠れるようになってきたところなのに。手が震えて、暴れられなくなる。怖くなって、泣きたくないのに涙が滲む。



「大人しくできるんじゃねえかよ」



何も声を出せなくなって、連れていかれるわたし。

……周囲の人間は、見て見ぬフリだ。




「っ、恭、」



また彼に迷惑を掛けてしまう。

そう思うと余計に苦しくなって、呼吸が(すさ)んだ。



「……誰の女に手ぇ出してんだよ」



男の足が、止まる。

聞き慣れた声にハッとして顔を上げたら、余計に涙が出てきた。……どうして、ここにいるの。



「なっ、花蔵、」



「だけじゃねえよ~?

知ってた? 藍華の特攻隊長って、3人いるんだわ」



恭、暖くん、チカくん。

3人の姿を確認した男たちは、明らかに動揺してる。