藍華の中で、いちばんに戦線に飛び出す一番隊。

そのトップを務めるのが恭だから、怪我をする可能性はいくらでもある。この間みたいな怪我で済まなかったら、という不安もある。



そんなわたしの不安を拭うように、恭はメッセージを送ってすべて伝えてくれた。

相手の陣地に乗り込む時刻は20時で、すべて片付いて藍華に帰ってきてからしか連絡が取れないことも。



藍華は引き継ぐ伝統の上、先に手を出せない。

だからはじまりが遅く、長引く可能性もあることも。



もし何かあったら、その時だけは前回と同じようにあすみくんからわたしに連絡が来ることも。

……そんな"もし"なんて、考えたくもないけど。



「みんな無事でいてね、」



翌日の授業は、内容がほとんど頭に入らなかった。

果歩にも、ぼーっとしてどうしたの?と聞かれたくらいだ。



……さすがに勝手に事情は話せないから、なんとなく誤魔化しておいた。果歩は藍華の存在も知らないし。

リカちゃんからは『鞠ちゃん大丈夫?』とわたしを気遣う連絡が来ていて、リカちゃんも、あすみくんのことをとても心配しているらしい。




「ほんとに大丈夫? 鞠」



「うん、大丈夫。また明日ね」



帰り際まで心配そうな果歩と別れて。

学校を出たところで、「お姉さん」と声を掛けられる。



「……はい?」



目の前には、男の子5人。

申し訳ないけれど藍華の幹部が全員綺麗な顔をしているせいで、ひどく霞んで見える。



「憶えてる? 俺らのこと」



……憶えてる?