恭が、怪我をしたあの日。

……思えば、怪我は割かし軽いもので済んでいたけれど、それでも見ている分にはとても痛々しかった。



『それが明日。

……言わねーでおこうかと思ってたが、"あとから報告したところで心配させることに変わりはない"ってアイツらに言われたからな』



「……うん」



『怪我一切しねー、なんて約束できねーけど。

……俺のこと信じて待っててくれるか?』



いま恭が言った通り、彼はわたしにそれを伝えたくなかったんだろう。それでも、わたしのことを信じて伝えてくれた。

……それならわたしも、信じて待たなきゃいけない。



「待ってるから。

……絶対わたしのところに帰ってきてね」



恭が、もちろんと頷いてくれる。

迷いがないから、きっと心配しなくても大丈夫なのだろう。




『鞠。

明日無事に終われたら、近いうちにデートするか』



「……する」



『ん。どこ行きたいか考えとけよ』



鞠の好きなところに行こう、と。

そう言われて、頭の中で行きたいところを考える。恭とならどこにいたって楽しいけれど。



「水族館、行きたいな」



「わかった。約束な」



二つ返事でいいよと言ってくれる彼に、笑みが浮かぶ。

絶対約束だからね?と何度も念を押してから、彼に怪我に気をつけて欲しいことを伝えて、最後に「おやすみなさい」と電話を切った。