「なんで俺がここにいんだろうなって顔だな」



「……いいんすか、俺の前でその口調で」



「別にいいよ。お嬢様たちの前で気をつけてりゃ」



……おー。なんか、アレだな。

この人、本来はめちゃくちゃ口悪そうだな。



「まあ、それもそっくりそのまま返すわ。

……鞠お嬢様と喧嘩でもしたのか?」



「……べつに大した喧嘩じゃ」



早くも次を頼みたいようで、グラスの残りをすべて呷ると、ドリンクメニューを視線で辿る黒田さん。

すぐに決めたのか、会話しながらそれは俺に回ってきた。きっちり、ソフトドリンク側を向けて。




「へえ。……お前でも西澤と喧嘩するんだな。

あんなに普段は可愛がってんじゃねえか」



「別に俺も喧嘩したくてしてんじゃねーよ」



「なんか怒らせるようなことしたんだろ?」



みちるさんの中じゃ、俺が怒らせた前提らしい。

でもまあ普段の性格上、それもよく分かる。……分かるが、今回はどうしたって俺が悪いわけじゃない。



「……鞠がこの間、合コン行くって言い出して」



「ほう。どうしたんだ急に」



もちろん出会いを求めて行くわけじゃなく、仲が良い高校の友だちに頼まれた人数合わせらしい。

でも人数合わせなら、恋人のいないヤツを適当に見繕えば良くね?めちゃくちゃ親しくなくても、クラスに一人くらいは誘えそうなヤツとかいるだろ?